515話 『伝説のM』

こちらの続きです。




 先へと進むリーダーは背後から響く足音に気づき、耳を澄ませた。
 一瞬、サトコが追ってきたのかとも思ったが、彼女の自慢のスニーカーからはほとんど音がしない。今聞こえているのは明らかにヒールの音だ。
(この闇のデュエルは異常だが、デュエル以外での危険は無い...はずだ)
 振り向こうとしたリーダーの視界が、布のようなもので覆われる。
(なんだ!)
 全身を支配した緊張は、布から微かに感じられる香りによって消え去った。

「だーれだ!」
「メイさん、なんでここに」
 声を聞くまでもなく分かっていたが、そこにはいつも集まっているカードショップのお姉さんことメイが立っていた。しかし、いつもお店にいるときのようなジャージにエプロン姿ではなく、ダークグレーのパンツスーツにローヒールの革靴というシックな装いである。
「そのスーツ、どうしたんですか?」
「就活よ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「サトコは無事よ」
「安心しました、ありがとうございます。それを伝えにきてくれたんですか?」
 腰に手を当てて胸を反らしたままのメイは、目を細めてリーダーを睨み付ける。
「突っ込みも入れられない子に質問されてもなー」
 命を落とす危険さえある闇のデュエルの舞台に立ってから積まれ続けていた緊張がほぐれるのを感じながら、「お店をやめられたら困るじゃないですか!」と言った。

 「なぜお前がここにいるのだ!メイ!!」
 これまでの経緯を話していると、突如上方から洞窟全体を震わせるほどの声が降ってきた。思わず耳を押さえ目を閉じた二人が再び目を開くと、壁一面に機械が積まれた部屋へと移動していた。これまでの洞窟とは全く異なる光景に警戒をしながらメイの様子を確認したリーダーは、その姿に息を飲んだ。
「それはこっちのセリフよ、デウス。存在していたのも不思議だし、私の前に出てこられる神経は理解できないわ」
 ジャケットを脱いでブラウス姿になったメイの腕には、デュエルディスクが装着されていた。数々の強敵と戦ってきたリーダーでも見たことのない、エメラルドの輝きを放つディスクからは生命力さえ感じられるようだった。
「私はお前たちに敗れてからずっと、ただただお前たちに勝つことだけを考えて存在をつないできた。
ところで、サヲリはどうした?そのひよっ子に乗り換えたのか?あたらしいSか?」
 頭上から降りてくる巨大なモニターに、機械でできた髑髏のようなものが映り、メイに対して挑発の言葉を投げかける。その姿は機械仕掛けの神デウス=エクス=マキナを髣髴とさせるが、低俗な嘲笑からはひとかけらの威厳も感じることはできない。

「サヲリ・・・?
あの伝説のデュエリストの・・・」
 デウスの言葉を受けても穏やかな顔をしているメイの姿と、デウスの言葉に出てきた名前がリーダーの記憶の井戸に小さな石を投げ込む。
 それは幼いころに偶然見たデュエルの場面。世界的なブームとなり、初めて開催された世界大会の決勝デュエル。驚異的な強さで勝ち続けた二人組の女性デュエリスト。当時はイニシャルでのエントリーだったため、名前は伝わっていなかったが。
「まさか、伝説のSMコンビ!メイさんがあのM!?」
「その呼び方はやめて!」
 いつものんびりしているメイが顔を赤くして叫ぶのを見て、リーダーは確信した。湧き上がる興奮を抑えようとしながらも、憧れの存在が目の前にある奇跡に涙が零れていた。

「あなたのせいで私の過去がバレちゃったじゃない!このデュエルで存在を断ち切ってあげるから、かかってきなさい!」

 デュエルは5分とかからずに決着してしまった。並列接続されたコンピューターと、かつてのデュエルデータから最善手を瞬時に出すデウスは、全ての手を出し切ったところで完封された。相手の攻撃を耐え続けて出し尽くさせてから動き始めるので、イニシャルと合わせてドMと言われたメイのスタイルだった。
 完膚なきまでに敗れたデウスは、絶望とともに消滅した。

 ショーでも見ているかのような気分のリーダーが拍手をしていると、メイの姿が一瞬ブレた。
「あー、もう時間か。悪いけどあとはあなたが頑張りなさい!」
 腕時計に目をやって天を仰いだメイは、リーダーに向かって封筒を差し出しながら早口に言う。慌ててリーダーが受け取ると、音もなくメイは消えてしまった。手に握った封筒と微かな香りにリーダーは深く礼をする。

『あまり話せる時間は無いと思うので、書いておきます。かつて私は親友と共に闇のデュエルへと参加したことがあって、その優勝賞品として少しの間別の場所に移動できる魔法をもらいました。
 その親友はサヲリといい、あなたたちの友達のサトコの姉でした。海外に行ってしまったあと音信不通になってしまったので、詳しいことは分からないまま、私はサトコの姉代わりに面倒をみていたの。海外に行っちゃうからって、この魔法を選んだのに。
 サトコは闇のデュエルで失ったものを、残った命を懸けて取り戻すことができました。残念ながら左手だけは後遺症が残ってしまうようだけれど。
 私は私で親友の情報が少しでも得られればと思い、そこに行くつもりです。アドバイスもできると思うし。
 
 役に立つと思うカードを入れておきます。
 いつもひいきにしてもらっているから、差し入れだと思って受け取ってください。
 そして、必ず買い物にきてね。』

 三回繰り返して読んで封筒にしまって、大切にリュックへと入れる。カードはまだ見ない。
 手紙を読んでいる間に崩れ落ちた機械の奥から門が顔を出していた。
 最後のデュエルの予感に気を引き締めて、リーダーは門を開いた。




どうにか考えていた分は入れられたと思います。
書ききってはいませんが、設定をあとでまとめようかな。
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うわきも

Re:

そうですね。

ykwgvpwsrnj@gmail.com

Gracias por estar pendiente. Lamentablemente, debido a un problema técnico, hemos postergado la videoconferencia para el martes a la misma hora. ¡Hasta entonces!

たぶん本人見てないからアピールしないと

Re: ドクターさん

ありがとうございます。
大丈夫です。
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