スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『衛星ボウイは空を見る』エンディング

 すれ違う天体の引力全てを計算しながら活用し、グングンと勢いを増していく衛星ボウイ。
 彼の速度はすでに光速を超え、その運動エネルギーは彗星にも匹敵する。
 進路にある全ての天体の動きを計算により把握して星々の間を縫うように進んでいく技術、サテライトドロップス。
 衛星ボウイのヘルメットが計算補助を、スーツが衝撃から身を守ってくれなければとても実現できない技術だった。

「あれが、アテネムーンか、確かに素敵な星だなぁ」
 親指の先ほどになったアテネムーンを眺めてから、進行方向へと振り向いたときには彼の体は深い深い闇に飛び込んでいくところだった。
「うわっ」
-うぐっ
 闇から聴こえる小さなうめき声を聴くと同時に、衛星ボウイは再び気を失った。

「おい、ボウズ!起きろ!」
 埃っぽい地面に横たわる衛星ボウイは、乱暴な言葉とともに文字通り体を起こされた。
「うう、ここは…
 痛たたたたたたた。なんでこんなに体がぼろぼろなんだろう」
「お前はよくこの状況でそんなのんびりしていられるなぁ」
 衛星ボウイの首根っこを掴んで持ち上げている男が、呆れたように言ってその手を放す。
「おじさん、ここはどこなんだい?なんで僕は星に降りているんだろう」
「お、に、い、さ、ん。だ!ここに落ちてきた理由なら、俺が訊きたいね!
 人がぐっすりと眠っているところに突っ込んできやがって、あと30年は寝ていられたのにお前のエネルギーのせいですっかり目が覚めちまったよ」
 自分で訊いておきながら、衛星ボウイは何かを探し回っている。動くたびに立ち上る砂埃が彼の全身を汚していくのも気にならないようだ。
「ヘルメットが見つからないけど、おじさん知らない?」
 何を言っても無駄だと悟ったのか、男は黙ってヘルメットを投げ渡す。
「ありがとう。
なんだか、体が重いや」
 ヘルメットを被って落ち着いた衛星ボウイは、その場にくたっと座り込んだ。
 そして、この星に来て、初めて空を見た。

 見たこともないような、茜色の空が頭上に広がっている。ところどころに浮かんだ薄雲は光の加減で淡い紫色に染まり、橙色の恒星が地平線の少し上に浮かんでいた。
「これが、空?」
「夕焼けだな。もうすぐ夜になる」
「青空とは違うんだね」
「夜が明ければ、青空も見られるだろ」
「そっかぁ」

 静かにこぼれる涙を拭うこともなく、衛星ボウイは頭の中で呼びかける。
(爆弾タイガー、爆弾タイガー。こちら衛星ボウイ。僕は今、空を見ているよ)
 呼びかけが終わると、彼の体からがくんと力が抜け、吸い込まれるように眠りに就いた。

 しばらくして、目を開くと、そこには満天の星空が広がっていた。
 いつも見ている光景にほっとした衛星ボウイは、再び瞼を閉じた。

 瞼を閉じていても感じられる強い光に衛星ボウイは起こされた。

 そこには、雲一つない青空があった。
 ポスターで見たものよりも、淡い青。
 不意に訪れたその瞬間に、衛星ボウイは体が広がっていくような感覚に戸惑っていた。
 青空に自分が溶け込んでしまいそうな感覚に慣れると、湧き上がる幸せに涙が流れる。

(爆弾タイガー、爆弾タイガー。こちら衛星ボウイ。僕は今、青空を見ている)

「ありがとう、爆弾タイガー」
 涙を流しながら言う衛星ボウイを見て、星食いの男はふっと表情を和らげる。

「僕は今、青空を見ています」

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

エンディングを予想しながら読んでたんです。
哀しい感じになるのかな?
はたまた最後にもしかしてボケたりして!
ってww
星食いさんの名前をつけたところが見たかったです。次回かな??
続きをお願いしますね!
PS...うちの娘っこがおー!おー!と言いながら読んでましたよ!

Re: kyonさん

こうなったら、第二章に入ります!
書きたいことがむくむくと膨らんでいるので、どうにかまとめたいと思います…

お嬢さんにまで読まれてしまっているとは…恐れ入ります。
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。